【大友信彦のもっとラグビー】

 パリ五輪へ希望が見えてくる戦いだった。4月5〜7日に行われた7人制ラグビーのワールドシリーズ香港大会(香港セブンズ)で、日本女子が今季初めて8強入り。最終戦では今季オーストラリア大会で優勝したアイルランドを12―5で破り7位で大会を終えた。平野優芽主将(24)=ながとブルーエンジェルス=は大会のドリームチームにも選出された。

 7人制ラグビーが五輪競技になったのは2016年のリオデジャネイロ大会から。日本女子の成績は出場12カ国中、リオが10位で、21年東京大会は最下位。だが今回は、過去2度とは違うアプローチがなされている。それは、国内大会「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」との連携だ。

 この大会は五輪代表選手育成を目指し、7人制女子の公式戦を増やそうと14年に誕生。それを機に国内には女子ラグビーのチームも競技人口も着実に増加し、ニュージーランドなど各国の代表や若手も続々と参加した。『タイヨーセイメイ』は海外トップ選手の間でも高く評価されている。

 しかし、日本代表はこの大会を有効活用してこなかった。五輪を目指す日本代表候補選手は「年間200日以上」に及んだ合宿で拘束され、16年と21年の両五輪イヤーは同シリーズにほとんど出場しなかったのだ。

 流れを変えたのが東京五輪後に就任した鈴木貴士ヘッドコーチ(43)だ。「なるべく多くの大会に出た方がいい」と合宿よりも大会を経験させる方針に転換。大会で活躍した選手は有名無名を問わず、代表候補に招集した。香港セブンズでも活躍した辻崎由希乃(29)=ながとブルーエンジェルス=は、北陸学院大卒業後にバスケットボールから転向6年目の22年に、同シリーズでの献身的なプレーが評価されて代表入りした一人。選手選考の明確化と実戦重視は、昨年のワールドシリーズ昇格と3度の8強入り、最高順位5位という結果につながった。

 そして迎えた五輪イヤーの今季。太陽生命シリーズ4大会のうち2大会がワールドシリーズと重なってしまったが、そのひとつ、4月6〜7日に行われた北九州大会では、2位となった三重パールズの山中美緒(28)ら3人の強化選手が出場した。国内外の複数大会で経験値を高めれば、選手層は着実に厚くなる。

 海外から参加した選手は「こんないい大会は世界中どこにもないわ」と口をそろえる。パリのみならず、28年ロサンゼルス五輪に向けた強化のためにも、残り3大会を有効に生かしてほしい。第2戦は、4月20〜21日の熊谷大会だ。